キェルケゴール

堀 剛

 

最後まで一人の女にしがみついたのが
唯一 気に喰わぬ
だが、君は
恋人レギーネが結婚して、以後
不吉な不倫の恋人となった
既に伴侶のある女に変身したレギーネを
そこから先
尚、追い続ける君は
婚約破棄をしでかした男から
人妻に恋する男となった

伝授の弁証法
哲学的言語に武装された
対立する騎士である君よ
インコグニトに於いてのみ
レギーネに語り
逆説によってしか
語りかけることが出来なくなった君は
『おそれとおののき』で恋人を断念する男を描き
『死に至る病』で悲恋の脱出法を描き
『キリスト教の修練』ではレギーネへのラブソングとした
非難の中のキリストのように
君は尚、『瞬間』に於いて
逆説的愛の行為を模倣したのだ
それもこれも全部、レギーネのためだった

ただ、一つ
君が幸いだったことがある
レギーネには君の愛が不可解であったということ
そうでなければ 君は
闘争のキリストを演じきることもなく
おめおめと
略奪婚を遂行し
僕らの天才になることもなかっただろう

もう一つ
君が幸いだったことがある
闘いの終わりに
死が訪れたということ
非凡な友よ
やり残すことも無くなれば
人はかくも早々に去るものかと
示してはばからない
たった一人の殉教者よ


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